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私の名前は山葵トロ。
主に展示会の企画運営を取り扱う、イベントビジネス企業に勤める4年目のOL。
友人や同僚からは「アンタは悩みが無さそうで良いよね」なんて言われるけれど、傍からは能天気に見られてしまう私にも実は大きな悩みがある。
その悩みと言うのは、妄想癖が年々悪化している事だ。
食事中やトイレに入っている時は勿論のこと。
最近では突如妄想世界に入り込み、業務中に作った企画書がいつの間にか、俺様上司と美人眼鏡秘書の危険な情事小説にすり替わってしまう始末だ。
寝ても覚めても妄想に明け暮れる私。
「これは、脳細胞に浸食する新種のウィルスの仕業に違いない!」と思い、真夜中に救急外来へ駆け込んだが、櫻井とか言う毒舌ナースに門前払いされてしまった。
私がいつか人類を脅かす奇病に侵されている事は、親友であろうと言えない。
誰であろうと絶対に言ってはいけない。
「妄想癖があるなんて誰にも言えない―――っ!」
「うるせー!トロロ!仕事中に何考えてやがる!」
「―――ほぇ?」
「『ほぇ?』じゃねーよ!おまえの頭ん中が怪しい妄想で埋め尽くされてる事は、ここの社員全員が知ってんだよ!」
デスクに座り頭を抱える私に向かって、里倍係長が目を吊り上げて一喝した。
彼は私の上司で、このイベント企画課の係長。名の知れた国立大を卒業した秀才だけあって、32歳と言う若さで係長のポストに就任した所謂【デキル男】。
仕事も出来て超イケメンであるにも拘らず、社員からは鉄仮面と言われる程の不愛想な表情に乱暴な口調。
恋人が居るなどの浮いた話は一度も聞いた事が無く、容姿端麗な女子社員にすら見向きもしない。
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