1.42nd G7 SUMMIT

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「そういえば、2千円札が出たのは沖縄サミットの時でしたね」 作業の手を休めず瀬川は越智矢に話しかけた。 越智矢もディスプレイから目を離さぬまま応えた。 「あれを手にした時はババを引いた気分がしたものさ」 大学を卒業し就職した太田書房を僅か半年で辞め、去年の秋、 週刊真実の中途採用に応募してきた瀬川孝太郎。 その純真さと情熱を買った越智矢の目に狂いは無かった。 この編集作業も瀬川の発案によるもの。 週刊真実は早くから投稿サイトを設け、 全国の読者からニュース写真を募集していた。 事件性の無いものであっても積極的に誌面で取り上げ、 読者との交流維持に努めた。 熊本震災の報道ではそれが奏功し、 広く一般からの提供された写真掲載で他誌を圧倒した。 その成功体験を今度は世界を相手に生かそうというのが、 瀬川のアイデアだった。 「サミットの取材で世界中から特派員がやってきます。 このチャンスを逃がす手はありません。 アライアンスを組む相手を探すんです。 我が社だけが手にする日本の写真情報と、 海外からのオリジナルなニュース写真を交換し合う事で、 他誌との差別化を図りましょう」 海外の読者が興味を持ちそうな写真を選び出し、 簡単な英文解説を施しサイトにアップしていく。 伊勢志摩サミットに向け二人はその作業を急ピッチで進めた。
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