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「そういえば、2千円札が出たのは沖縄サミットの時でしたね」
作業の手を休めず瀬川は越智矢に話しかけた。
越智矢もディスプレイから目を離さぬまま応えた。
「あれを手にした時はババを引いた気分がしたものさ」
大学を卒業し就職した太田書房を僅か半年で辞め、去年の秋、
週刊真実の中途採用に応募してきた瀬川孝太郎。
その純真さと情熱を買った越智矢の目に狂いは無かった。
この編集作業も瀬川の発案によるもの。
週刊真実は早くから投稿サイトを設け、
全国の読者からニュース写真を募集していた。
事件性の無いものであっても積極的に誌面で取り上げ、
読者との交流維持に努めた。
熊本震災の報道ではそれが奏功し、
広く一般からの提供された写真掲載で他誌を圧倒した。
その成功体験を今度は世界を相手に生かそうというのが、
瀬川のアイデアだった。
「サミットの取材で世界中から特派員がやってきます。
このチャンスを逃がす手はありません。
アライアンスを組む相手を探すんです。
我が社だけが手にする日本の写真情報と、
海外からのオリジナルなニュース写真を交換し合う事で、
他誌との差別化を図りましょう」
海外の読者が興味を持ちそうな写真を選び出し、
簡単な英文解説を施しサイトにアップしていく。
伊勢志摩サミットに向け二人はその作業を急ピッチで進めた。
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