頑固一徹と八方美人

僕は病室でそのことを思い出す｡

痛みと闘い、今の死の縁に立つ母に向けた「早く逝っちまえ」にきっちりと父の思いを感じた。

「もう苦しまなくていいから早く楽になりなさい」

父は、そういう思いをぶっきらぼうな言葉で表したんだ。

僕が子供の頃に尋ねた母の答えは、こういう言葉で締められたんだ。

「お父さんは短気でぶっきらぼうだけど大きな愛があるから……」