6人が本棚に入れています
本棚に追加
「私みたいなのんきな八方美人には、ちょうどいいの」
そんな言葉を思い出していた、僕の横に立つ父の目からは涙が滲んでいて、その手は母の手をしっかりと握っていた。
「早く……早く逝っちまえ。あとのことは心配するな……。もう苦しまんでくれ……」
お父さんお母さん、僕はちぐはぐなあなたたちの子で良かった。
最後の最後で父は、大事なことを言葉にした。
お母さん、ありがとう。
僕はお父さんみたいに言えないけれど、お父さんみたいになるよ……。
それから、間もなくして母は逝った。
父のまぎれもなく大きな愛を目にして……。
了
最初のコメントを投稿しよう!