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記憶はそこでお終い。 それは遠い日のようで、ついさっきのようで。 昨日? そんな難しいことは思い返せない。小さな脳みそ。 まだあたりは薄暗くて、日が昇りきっていないことだけは分かった。 けれど「母」は、すでに飛び立って、向こうの電線の上で高い声を上げている。 見覚えのない景色。 こんな草むら、今時残っていたのか? 兄弟だろう。彼らは既に支度を終えた。 所構わず、翼を広げるのは止めてくれ。 虫の取り合いもやめろ! 今朝は大切な朝なのだから。 そうだ、私はそれだけ知っていた。 今朝は大切な朝。 私が「鳥」になった朝。 私たちが飛び立つ朝。
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