閑話・金の国

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「出街手続きを行ってください」  虎子の目の前に遮断機のバーが降ろされた。すぐ傍で機械が淡々と言っている。「出街手続きを行ってください」と。  思い出せば、街に入る際、お金を取られた。今度は逆に出て行くのに金が必要になるらしい。一応、幾ら必要なのかを確認すると、手元に残るお金は街に意気揚々とやってきた初日のお金にちょっとだけ上乗せしただけの金が手元に残ることになる。 「・・・・」  誰が言わずとも、虎子の顔は怖くなっていた。こういうところも、トコリコと似ていた。  久々にゆっくりできた。ピースは背筋を伸ばして実感する。いくら、身体が子供でも精神は三十歳以上になる。年齢的に疲れは感じる。 「そういえば、この国も相変わらずだな」  ピースが待ち合わせの場所に行く途中、小麦色に焼けた肌をした老人が仲間と話していた。 「財宝の噂を流して、売れないクルージングツアーに人を参加させるは、金の街で散々、働かせるだけ働かせ、最後はごっそり金を持っていく。うまい手を考えるものだ」 「そういうのを外国人に紹介して仲介料を頂く俺達も人のことは言えないけどな」  何やらうさんくさい話をしていたが、自分には関係のないことだと思い聞き流す。  少し金があったので、近くの店で売っていた新聞を買って全員が集まるまで、読んで待つことにする。幸い、この世界の文字はピースの故郷と同じで読めた。 「激安クルージングツアーで謎の爆発・・・。整備不要が原因か。観光スポットでも謎の発掘痕が多数発見・・・。観光に大打撃。共生労働施設、通称“金の街”で地盤沈下。どこもかしこも物騒ね」  ピースが新聞を読み進めていると、そこに虎子達が帰ってきた。 「お帰りな・・・さ・・・い?」
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