舞台裏のダイス投げ

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「わたしのぶんもあげる」  痩せ過ぎを心配したのか、ある女性が食堂で声をかけてきた。彼女は佐伯加奈子といった。凛とした顔つきをした美人だった。彼女は自分のぶんの食事をすべて俺に差し出した。 「え?」 「もっと食べなきゃ駄目よ」  彼女は、不思議な人だった。俺が意識しなくても、どんどん食事を口に運ばせるように俺の身体を動かしてくる。彼女は、超能力者か、まるで神様みたいに、俺を操った。  彼女は、俺のことを何もかも分かっているようだった。 そんなに簡単に体重は元に戻らなかったが、それ以上痩せることはなくなった。そして少しずつだが、増えてもいたようだ。 そんな彼女に、俺は真剣に恋をするようになっていた。 「わたし、結婚してるの」 と彼女は言った。しかし俺はそんなことではへこたれなかった。 「だったら、離婚したらいい」 「無理なこと言わないで」  彼女はその時は、俺を冷たくあしらったが、それ以後、何も言わなくなった俺に、同情からか、キスを許すようになった。 それも、舌を絡めるディープ・キスだ。でも俺はもっと先に進みたかったので、彼女の下半身に触ろうとした。 すると、 「それは駄目」  と拒まれた。 俺たちは、陰に隠れてのことだったが、なにかにつけて、ディープ・キスをした。
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