《序章》

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世界には3つの人種が存在する。 希少種α、大衆β、最下層Ω。 生まれながらにして人を惹きつけ、ある程度の社会的地位を約束されたカリスマα。そのαを心から尊敬し、従う重臣β。そして、唯一αの子を産むことが出来るΩ。 αに心酔するβにとってΩが虐げられるのはある意味必然なのかもしれない。だが、βがΩを嫌悪する理由の一つとして、最も多くの割合を占めるのはやはり三か月に一度訪れる発情期のためだろう。 この期間内のみ、Ωは99%ほぼ間違いなく腹に子を宿す。その間、Ωは狂ったようにαを求め、だれかれ構わず体を開く。しかし、Ωの発情はただ一人のαと番い関係を結ぶことでそのα以外には発情しなくなるという。 番う方法は簡単だ。αがΩの首筋を噛む、ただそれだけ。このことからもわかるだろうが、番い関係は基本的にαが主となる。例え、Ωが不本意であってもαの意向次第で番いになることもある。逆に、Ωがどれだけ泣きすがろうと、αが番いを認めなければその者は番いにはなれない。 Ωはαなしでは幸福を得られない弱小種族といえるのかもしれない。 そんな世界で今日、2人のαとΩの結婚式が挙げられようとしている。 美しい和服に身を包んだΩは幸せそうに微笑み、歓喜に涙をこぼした。そんな花嫁に皆は思わず見惚れ、彼の幸せを心から願った。 皆、彼のこれからの人生はきっと幸せにあふれていると信じて疑わなかった。 これがすべての不幸の始まりだったと彼が気づくのはまだ少し先の話。 不幸な花嫁に救いの手を差し伸べるのは、天使だろうか。それとも天使の皮をかぶった悪魔だろうか。 →《1章》へ続く
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