《1章》

1/8
2051人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ

《1章》

扉の閉まる音がした。もうあの人は行ってしまったのだろう。本当に好きな人の元へ。 例えようのない悲しみが沸き上がり、それが涙となって零れ落ちた。結婚式の日に流した涙よりずっと冷たくて、孤独な滴だった。 怒りはない。憎むにはあまりに私はあの人を知らなさすぎる。怒ることも出来ないほどに自分は無力で臆病だった。 今日から始まる。――悪夢の日々が。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!