《1章》
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《1章》
扉の閉まる音がした。もうあの人は行ってしまったのだろう。本当に好きな人の元へ。 例えようのない悲しみが沸き上がり、それが涙となって零れ落ちた。結婚式の日に流した涙よりずっと冷たくて、孤独な滴だった。 怒りはない。憎むにはあまりに私はあの人を知らなさすぎる。怒ることも出来ないほどに自分は無力で臆病だった。 今日から始まる。――悪夢の日々が。
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