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六月下旬。
日本列島は丁度梅雨の季節に入り、近畿地方は毎日の様に雨が降り注ぐ。
「今日も雨か…」
私立光南高校。
彼は三階の教室の窓から、降り続く雨を眺めていた。
「な~にやってんだよ櫻井!」
後ろから近づいてきた男子が、櫻井優斗の背中を叩く。
「よ、吉永……」
「何だよ元気ねぇなぁ!……まさか、恋とか?」
「ば、馬鹿そんなんじゃ……!」
しかし彼、吉永啓介の言っている事は本当だった。
ゆっくりと後ろを振り向く。
その視線の先には、本を読んでいる一人の女子。
彼女、向井恵梨菜は常に大人しく、成績優秀。
少し色白の肌に、ショートカット。
優斗は自分の理想の彼女に、一目惚れしてしまったのだ。
「それにしても……これで一週間続けて雨だな」
「まぁ梅雨だからな。しゃーねぇだろ」
放課後。
優斗は家までの長い道のりを、ゆっくりと歩いていた。
優斗の家までは、学校から車二台がやっと擦れ違える程の道を、約二十分歩かなければならない。
(ハァ……どうやったら、向井さんに上手く告白出来るのかなぁ……?)
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