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「どうしてそんな事をするんですかあっ!」
その溜まりきった頬の膨らみから放たれた*鬱憤は何故か俺へとぶつけられた。俺も被害を受けている側だというのに、どういう事なの。
「このまま、マキナ社が好き放題されてしまっても良いのですか、ますたぁ!」
リツカの両手にある*クロッシュの被さった料理皿が俺の目前にある書斎机へと叩きつけられる。
そうして置いた拍子に突いた両手を軸にし、そのまま「むうっ」という声を出しながら徐々にリツカが身を乗り出して来る。
迫るリツカの顔、座っている所為で退くに退けない俺。
必然的に距離は縮まり、目と鼻の先まで互いの顔は近付く。目の当て所に困った俺は、とりあえずそっぽを向いて対処。だが、リツカも負けじと留まって動こうとしない。
紫水晶の強い視線が俺の横顔をちくりと刺激する。
やれやれ。あの計画をリツカにはあまり話したく無かったのだが、そんな事を言ってられそうにも無いようだ。
「まぁーすぅーたぁ!!」
「分かった、分かったって!」
大きなため息を一つ吐いて、腹を括る事にする。薄々、嫌な予感はしていたが、顔を正面に戻してみると白肌の凛々しい顔はまだ側にあり、両頬には鬱憤が再装填されて今にも晴らさんとしていた。
【解説】
鬱憤(うっぷん)→不平不満の積り。心の中に積もった怒りや恨み。
クロッシュ→クローシュとも。フランス語で鐘を意味する。帽子の意味を指す事もあるが、ここでは料理に被せる金属製の覆いを指す。
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