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「まあ、落ち着け。今度から徹夜した時はちゃんとカーテンくらい開ける事を約束する」
「当たり前です。それと、私が一番気にしているのはマスターのお身体です!」
リツカの言う通り、確かにここ最近は勉強していたら夜から朝になっていたなんて事が度々あるのは事実。だが、俺も好きで徹夜をしてる訳じゃあない。
「リツカの気遣いはとてもありがたい。だがな、昨夜に面白い電話が掛かって来たんだ」
「面白い電話、ですか?」
リツカが話に食い付くと、ぷっくら頬から少しずつ空気が抜けていく。同時に疑問の満ちた顔へと変化させ、小首を傾げる。
「ああ、とびきりに面白い電話だ。相手はロボット開発会社の三大勢力にして、現在頂点に立っている《デウス》社の長から直々に掛かって来た。
通話時間は1分も経たない極めて短い内容だ。挨拶も無しに、軍人みたいな抑揚の無い声で奴はこう言った。
デウス社は御社、マキナ社へ戦線布告を掲げる。明日、*黎明を以って、鋼の戦の狼煙を上げるってな。その後、話しかけても一向に無視されて強制的に電話を切られた」
リツカの首がどんどん斜めに傾いていく。
無理もない。俺も最初に聴いた時は、ちょっと何言ってんのか分かんないっすねとしか思わなかった。
「詰まる所、デウス社が俺達の会社を潰したいんだろう。只の悪戯電話だったら愉快だったが、今朝にウチの社員がデウス社による酷い宣伝が放映されているのを確認したらしい」
「もしかして、今朝からサービスセンターの電話が追われているのも……」
「その宣伝によるものだろうな。聞いた所によれば、同じ製品でも頑丈さを比較する為に商品の落下テストをして、その結果を流すというものだったらしい。
比較対象は勿論、我らがマキナ社。50mの高さから落とされたマキナ社の四足歩行型ペットロボットは木っ端微塵。対してデウス社の商品は傷一つ無い頑丈さですよという見事な宣伝だったらしい」
再び、リツカの両頬がフーッと膨張を始める。今度はさっきよりも膨らんだ状態となり、ぷるぷると体も小刻みに震え出した。
【解説】
黎明(れいめい)→明け方。物事の新たな始まろうとする時。
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