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29歳の結婚は還暦を過ぎた私の若い時代には少し遅すぎていた。当時としては23歳までには嫁がないとイキソビレ、イキオクレと呼ばれていた。しかし、そんな数回のお見合いやらを経験し、最後は結婚相談所と言っても今のようにネットもない時代だったから普通に電話や手紙のやりとりという旧式の付き合い方だった。私が惚れたのは年収や安定した職業や家を新築予定という理由だけではなかったし、勿論地下鉄駅徒歩3分という最高の立地条件だけではなかったのだが、最終的に別れられなかったのは条件が良かったからでもなかったのだが、度々入退院を繰り返していた私には仕事をして自立する自信もなかったし、夫も絶対に別れないと大喧嘩したときに発した言葉通りに離婚はできなかった。たぶん合わない要因は元々あったのだろうが、夫の治らない病が余計に二人の心を遠ざけていた。もし、夫がガンでなかったならと想像しても仕方がないのだろうが、夫は私の何処が好きだったのだろうか…体型もデブになり消えたウエストではあったが、年老いていた年齢ではなく、私はいつしか魅力のない女になってしまったのだろうかと勘違いしはじめていた。子供が県外の高校へ通い始め、帰ってきた時だけ楽しい親子を演じた。二人の時は食事も別々になり、勿論寝室では私は休まずにリビングソフア寝をしていた。夜中に私が居なくても気付かない夫は楽しい人生だったのだろうか…不倫することはしなかったからこそ怨みは強くなり、他界して12年経過した今も許せない。何がちぐはぐだったのかもわからないまま存在しない人を思い出し書くことはまだ心に残っているからなのだろうか、夢に現れたりすることも愛はないが、結婚したという過去しか今の私にはないからなのだろか自問自答してみるが、もはやもう一度ちぐはぐな男に出逢いたいという勇気もなく、気づいたら週末になり、人生の終末を迎えるのだろうか…今の私には自分自身の気紛れさにしか付き合えないでいる。
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