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「いやー、ごめんごめん、昨日は迷惑かけたんだって?」
青白い顔をしながら、開口一番に宗像は言った。
見るからにひどい二日酔いだ。にもかかわらず笑顔を振りまいている姿は痛々しい。
「見事だな」慎一郎はぼそりと言った。
「え、何の話」宗像はとぼけたが、笑った顔が凍りつく。
「具合悪いなら、無理に来なくても良かろう」
「そっちの方がムリ」うーっと頭を抱え、宗像は呻く。
「奥さんがやけに親切で、かえって怖い。ちくりちくりと言われる一言が痛すぎてもうダメ。二日酔いで寝てたいなんて言おうものなら、どんな目にあうことやら」
ぶるぶると身震いをする。
「自業自得という奴だな」
「それがわかんないんだよ、俺、何かしたか?」
慎一郎は目をぱちくりと見開いた。
友人の表情から、「したんだ……」と宗像は肩を落とした。
「覚えてないのか」
「だから、何? 頼む、教えてくれ」
「もう深酒はしないことだ」
「しないよ、悪酔いはするし、もう若くないんだって実感した。だから、何したか教えてくれよう。でないと仕事に集中できないー!!」
痛むであろう頭を抱えて、宗像は慎一郎に詰め寄る。
知ったらもっと集中できないだろうに。
必死の形相の宗像に、慰めにもならない答えを与える。
「投げ飛ばされたと言っていたな」
「誰が? 俺が?」
「秋良に関わることらしいが」
宗像の青白い顔に苦虫を噛み潰した表情が加わる。
「淑女の名誉に関わることだから、俺の口からは言えない」
「なら、私も協力できないな」
「あ、お前、そりゃないだろ、性格悪くなったなーっ!!」
「お互い様だ」
「ちえーっ、何だよう! 俺は忘れちまいたいことなんだ!」と吠えて、宗像はぽつぽつと語り始めた。
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