短針は長針の陰にある

2/4
555人が本棚に入れています
本棚に追加
/865ページ
その日は晴れだった。 時任探偵事務所に転がり込んだ私は探偵さんと自分の洗濯物を干していた。 三連休の土曜日。学校がお休みだから今日は事務所で依頼を待つ。 時任探偵事務所の休日は少ない。 なぜなら、探偵さんが解決する事件がぽつぽつと入ってくるからだ。 探偵さんが解決する事件は民事ものが多い。 民事事件は、刑事事件とは違って警察が絡まないものを言う。 例えば、御近所のトラブルだとか猫さがしだとか。 今日の探偵さんは犬を探しにいく予定みたい。 私は探偵さんが時任探偵事務所を空けている間、留守番をすることが仕事になる。 探偵さんと一緒に住み始めて二ヶ月になるけれど依頼が来たのはほんの数件。それでも事務所が運営できるのは探偵さんの祖母の遺産のおかげだった。探偵さんの祖母は大金持ち。時任事務所の名前は売れない作家の祖父の名前。不思議な人生を持っている探偵さんは今日も時計を眺めている。 私は探偵さんのワイシャツをハンガーに干す。 正直、洗濯と掃除が終わると退屈だった。 さっきもいった通り、依頼がぽんと入ってくるわけではなく。 退屈な時間をどうやって過ごすかがポイントとなる。
/865ページ

最初のコメントを投稿しよう!