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私は本を何冊か接客室として使っている中央部屋の机に載せて、ソファに座った。
携帯でもクロスワードでもナンプレでも構わない。
時間が潰せればテレビゲームでもいい。
そんな環境に私は取り残されている。
だけど依頼がないということは比較的平和だということ。
私は雑誌を捲りながらうとうとしていたんだ。
だから探偵さんが帰ってきたことに気がつかなかった。何やら私に黙って旅行の準備をしているようで普段からひっきりなしに開いている。接客室の隣部屋のクローゼットから旅行バックを取り出していた。
「探偵さん。どこへ行くんですか?」
私はソファから立ち上がって探偵さんが居る隣部屋に移動した。
振り返った探偵さんは旅行バックを片手に持ち直す。
「依頼だよ。少し長い旅になる」
探偵さんがそんなことを言うときは厄介な事件に巻き込まれているということだ。私だっていつも鈍感じゃ無いんだから。
「私もいきます」
思いきって我が儘言えば、探偵さんは困った表情を浮かべた。
「今回は着いていくんです。何日も置き去りはいやです」
「危険なんだけどな」
「民事ではないんですか?」
「殺人予告だよ。──行くかい?」
「行きます。だって、子供連れの方が良いじゃないですか。犯人だって探偵が子供を連れてくるだなんて思っていないだろうし」
少しだけ、緊張した。
探偵さんがいう。
「今回だけだよ?」
渋々と言った了承に私は頷いた。
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