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俺は太平洋に面した海岸から100キロ以上離れた山の上の、親父が俺に残してくれた別荘のリビングで、最後の時を迎えようとしていた。
遥か遠くに太平洋を眺められるリビングのチェアに座り、1ヵ月程前に偶然発見された巨大な隕石が、太陽が沈みつつある海岸から遠く離れた沖合いに落下するのを目撃。
落下による凄まじい衝撃と共に、高さ500メートル以上はあるかと思われる津波が、海岸から別荘に向けて押し寄せてくるのを、バーボンを呑みながら眺めていた。
押し寄せてくる水が別荘を飲み込むと思った瞬間、不思議な事が起きる。
押し寄せてくる水が、別荘を避けるように流れていく。
俺はバーボンが入ったグラスを持ったまま立ち上がり、リビングからベランダに出て周りを見渡す。
水は別荘の周りに結界が張られているかのように、別荘を包み込むように流れていた。
そのとき長年殺し屋を生業にしてきた俺の五感が、俺しかいない別荘の中に、何者かが侵入したことを感知する。
チェアの脇のテーブルにグラスを置き、テーブルの上に置いてあった愛用の拳銃、グロッグ17を手に取り安全装置を解除、足音を殺してリビングを出た。
グロッグを構え階下を覗き込み人影が無いことを確認、静かに階下に降りる。
1階の気配を探るが人の気配は無い。
そのまま親父の蔵書が置かれたままの、半地下の書庫に向かった。
階段を下り、階段から書庫に続く通路を窺う。
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