第1章

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足音を忍ばせ書庫のドアに近寄りそこで一度深呼吸、それからドアを細めに開け中を窺った。 俺の耳に書物のページを捲る音が、微かに聞こえてくる。 ここだ。 半地下室の薄暗い書庫に素早く滑り込み、音のする方に移動、書架の陰から通路を窺う。 若い男が通路に座り込み、親父の残した蔵書、蔵書といっても漫画だが、を、熱心に読みふけっていた。 他に人の気配が無い事を確認してから、通路に足を踏み出し男に声をかける。 「フリーズ! 」 若い男は呆気にとられたような顔で、俺を見上げた。 俺はそろそろと警戒しながら近寄り、男を観察。 黒いズボンにTシャツとスニーカー、見た限りでは武器は所持していないようだ。 「手を上げろ! 上げたまま立て! そうだ、そのまま後ろを向け」 男を立たせて後ろを向かせてから、身体検査を行う。 武器は所持していない。 男をこちらに向かせ、質問を始める。 「何者だ? 津波から逃げる為ここに入り込んだのか?」 「ぼ、僕、死に神です」 「死に神? ハハハハ……嘘つけ! 冗談を言っていないで本当の事を言え」 「本当です! 信じてください。 僕、死に神です」 「死に神にしては、商売道具の大鎌を持っていないじゃないか?」 「大鎌? ああ、あれは別に必要ではないんです。 あれを持っていると、一目で死に神と認識されるので所持している先輩もいますが、重いしかさばるので僕は持っていません」
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