1人が本棚に入れています
本棚に追加
足音を忍ばせ書庫のドアに近寄りそこで一度深呼吸、それからドアを細めに開け中を窺った。
俺の耳に書物のページを捲る音が、微かに聞こえてくる。
ここだ。
半地下室の薄暗い書庫に素早く滑り込み、音のする方に移動、書架の陰から通路を窺う。
若い男が通路に座り込み、親父の残した蔵書、蔵書といっても漫画だが、を、熱心に読みふけっていた。
他に人の気配が無い事を確認してから、通路に足を踏み出し男に声をかける。
「フリーズ! 」
若い男は呆気にとられたような顔で、俺を見上げた。
俺はそろそろと警戒しながら近寄り、男を観察。
黒いズボンにTシャツとスニーカー、見た限りでは武器は所持していないようだ。
「手を上げろ!
上げたまま立て!
そうだ、そのまま後ろを向け」
男を立たせて後ろを向かせてから、身体検査を行う。
武器は所持していない。
男をこちらに向かせ、質問を始める。
「何者だ? 津波から逃げる為ここに入り込んだのか?」
「ぼ、僕、死に神です」
「死に神? ハハハハ……嘘つけ!
冗談を言っていないで本当の事を言え」
「本当です! 信じてください。
僕、死に神です」
「死に神にしては、商売道具の大鎌を持っていないじゃないか?」
「大鎌? ああ、あれは別に必要ではないんです。
あれを持っていると、一目で死に神と認識されるので所持している先輩もいますが、重いしかさばるので僕は持っていません」
最初のコメントを投稿しよう!