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細く白い手をそっとお腹に乗せて、女はそう言った。
「・・・その願いを叶えて、私に何の得があるっていうんだぃ?」
かすれた声で女に聞き返す。
黒いフードの下に隠れる顔には、これまでの何十年・・・いや、何百年生きてきた事を記しているかのように深いシワが刻まれていた。
「・・・」
口ごもる女を見て、老婆はクスリと笑う。
「結局一人じゃ何も出来なくて、私を頼ってきたくせにー・・・。私の得になることなんか何にも考えてきていないじゃないかぃ」
老婆はそう言って、また女に背中を向け、机の上にある豆のような茶色い粒を灰色の汁のようなものが入った鍋に入れグルグルとかき混ぜる。
そのとき、女は決心したかのようにふいに立ち上がった。
「・・・私の、・・・私の若さをあなたに差し上げるわ」
女が諦めて帰ると思っていた老婆は、その返答に驚き、勢いよく振り返った。
さっきまでの、迷い目をしていた女とは表情が明らかに違う。
凛とした鋭い剣のように突き刺さる視線。
それを見た老婆が言った。
「・・・いいだろう。女の子を産ませてやる」
その言葉に、女はパッと笑顔になった。
「だが、残念じゃがその子はもう男の子と決まっておる」
次に続いた老婆の言葉に女は愕然とした。
妊娠が分かってから4ヶ月、少しずつ大きくなるお腹に期待と不安が高まっていたこの4ヶ月。
もしかしたら女の子かもしれない・・・と抱いていた希望も老婆のその言葉によって絶望へと突き落とされた。
「そ、そんな・・・。もう性別が決まって・・・」
震える手で、またお腹に手をやりそっと撫でた。
それを見た老婆は言った。
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