3・浮気疑惑と胸の痛み

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「何だよ、幽霊を見た訳じゃあるまいに」 課長がやれやれと言うように息を吐きながら言った。 目の前で仁王立ちをしている彼の格好はパジャマではなく、シャツにズボンである。 首のところにかかっているネクタイを見ると、朝の支度をしていた真っただ中だったらしい。 そこへわたしが帰ってきたと言う訳か…。 「きょ、今日はお早いんですね…」 呟くように、わたしは言った。 「早い? どう言う意味だよ」 課長が訳がわからないと言うように言い返してきた。 「いや、その…」 と言うか、何で課長が玄関にいるんですか? この時間ならてっきり寝ているかと思いました。 課長は平日は7時に起きるのである。 「お前、昨日どこをほっつき歩いてたんだよ? 実家に電話しても帰っていないって言われるし」 そう聞いてきた課長に、 「えっ?」 わたしは聞き返した。
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