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セットの高いところによじ登り軽々と動くお馴染みの小さな身体が見えた。ちょっとほっとして、頬が緩む。
あんなことであいつが仕事をおろそかにするわけないもんな。
板橋は小さく肩を竦めた。
「帰ってきたら速攻やんなきゃ気が済まないのか!って思うけど、あいつには。まあ二人とも大概慣れてて、時間の頃合いはわかって済ませてくるから特に問題はないよね。それにどうせ夜も続きするんだろうから。程々で切り上げて出てきたみたいよ」
「そうか」
ちょっと憮然となる。弁えてるから構わない、って言われちゃうと。まあその通りなんだけど。あの二人はもう知り合い中の公認の仲だし、今更誰も何とも思わない。少なくとも大学では。
しかしどうしてこんなことになったんだろう。いやそれは身に染みてわかってる。俺が悪いんだけど。
俺の機嫌が今ひとつよくないのはわかるらしく、軽く宥めるように声をかける。
「まあ、ああやってくっついてられるのも今のうちだから。それにしても竹田の奴もなかなかしぶといよね。もっと早くちゆに飽きるかと思ってた。あいつ、去年は女優専だったって話だけど。何だってあの子に突然興味持ったんだろうね?なんか特別なきっかけでもあったのかな?」
「うーん…」
俺は人知れず呻いた。それに関しては自分でも慚愧に堪えない。全面的に俺に責任がある気がする。
何だってあいつの助平心をあんなに少なく見積もったんだろう。おかげであいつらがこうなるきっかけを自ら作ってしまった。
今でもあれだけは悔いが残ってる。
だいぶ経ってから、何かの話の流れで千百合がぽつりと
「何だって立山くんはわたしとあいつをあの状況で二人で閉じ込めても平気だって判断したんですか。わたしが男の子みたいで、あいつが変な気を起こすわけないって思ったから?」
と呟いて、俺は心の底から参ってしまった。
「それについては。…本当、悪かったと思ってる。あんたのこと男の子みたいだなんて思ったことない、実際。そうじゃなくて…、俺ならあんな状況で変な気起こすなんて考えられなかったから。想像もつかなかったんだよ」
これは本当だ。そりゃ、クローゼットの外はエロい喘ぎ声、中では柔らかくて温かい小さな身体が密着していたら男は誰でも猛然と変な気を起こすのかもしれない。俺はそういう状況に自分でいたわけではないから想像に過ぎないが。
でも、だからって実際に行動を起こすとは限らない。
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