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「では、参ります。」
深呼吸をした後、和紗はなるべく足音を最小限に素早く斬りこんだ。
キンッーー
峰と峰がぶつかり合う。そのまま互いに動かない。和紗も斎藤も真剣な眼差しのまま刀を合わせ対峙している。
「お前……面白い。」
先に力を抜いたのは斎藤だった。そしてそのまま刀を鞘に収めると徐ろに和紗の着物へ手を伸ばしてきた。
「ぎゃあっ!!」
まるで大きな蛙を踏み潰したかのような声が出た。 みるみるうちに和紗の顔が茹で上がっていく。
「やはりな…… どうも男の割に随分と小柄で華奢だとは思っていたが。一応……あるな。お前、女か。」
着物の合わせを豪快に開き、露わになった胸を凝視して納得したように斎藤は口端を上げた。
慌てて合わせを掻き抱くが、依然として顔は赤いままだ。
「なっ、なっ……何するんです!?」
警戒するように斎藤を睨むが、そんな和紗を気にも留めていない。
「それは此方の台詞だ。女が新撰組に入ってどうするつもりだ?」
「それは……あのっ……」
口籠る和紗に、斎藤は更に距離を詰めていく。そのまま耳元に息を吹きかけそのまま囁いた。
「言いたく無いのなら言わせてやろうか?暫く女を抱いていないし、丁度溜まってたところだ。」
吐息がかかる程の距離で低く掠れた声が和紗の鼓膜を揺らす。
全身に冷や汗が吹き出て来るのが自分でも分かった。和紗が口を割るのに考える時間など皆無であった。
「話します!話しますから離れて下さいぃぃ!!」
涙目で斎藤の顔を押し返すと、和紗は慌てて距離をとった。
つまらないとばかりに斎藤は舌打ちをすると、路地に並べてあった樽の上に腕組みをして腰を下ろした。
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