其の壱

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この世には二種類の人間が存在する。 それは、支配する者される者。 世の理とも言えるが、ここ京の都壬生村にある新撰組内もまた然りーー 「 オラオラオラァ!!踏み込みがあめぇんだよ!今ので何回死んだと思ってんだコルァァ!!」 「今ので五回目ですね、沖田先生。実践であの隊士が死んだ数。ま、本当の実践だと命は一回きりですけど。」 「あーあーあー、あっちも見てらんないよね。剣先ブレまくりじゃない?」 「藤堂先生、あの方は先日入隊したばかりです。それも剣術すらした事ない人ですよ?無理もありませんて。」 先生、と呼ばれ壬生寺の敷地で隊士達の稽古を見守る沖田、藤堂と呼ばれる青年が二人。 厳しく声を荒げる沖田、沖田総司はその口調とは裏腹に少しばかり線の細い麗しい顔つきで、一目見ただけで男とは思えない容姿をしている。もう片方の青年は藤堂平助と言い、小柄でやんちゃな雰囲気を持つ愛嬌のある男だった。 そして、 「相変わらず冷静だね、和紗は。さすが三番組組長の右腕だけの事はあるよ。はじめも良い隊士見つけたもんだね。」 両名の一歩後ろにて、隊士達の正しい情報を冷静かつ端的に話すこの少年……如月和紗(きさらぎかずさ)は見るからに華奢で他の男達よりも格段に艶のある黒髪を結び靡かせながら、藤堂の言葉にピクリとも眉を動かさず平然と隊士達の様子を伺っていた。 彼等は所謂支配する側の人間である。いや、支配とは言いすぎな部分もあるが、兎に角上に立つ立場にある事に違いはない。
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