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さて、和紗が身をやつして新撰組に入隊して居るのには理由がある。
それを話すにはまず、この二人の出会いから話さなければならないのだが……
斎藤と和紗が出会ったのは今から約半年程前の事ーー
「あぁ~やっと着いた!長い道のりだったわ。」
手甲脚半の旅装束に身を包み、賑わう京の都をぐるりと見渡す。
住み慣れた故郷から京の都を目指して一月。ようやくたどり着いた地に、和紗は胸を躍らせていた。
「約束の時が来るまでは、好きにさせてもらう。」
柄袋に入った脇差しを握り締め、真っ直ぐと前を向く。その瞳には力強い意思が感じられた。
一歩一歩足取りを確かに念願の地を踏みしめながら、和紗は道行く人々にすみません……と声をかけた。
「新撰組の屯所までの道のりを知りたいのですが。」
しかし、誰に話しかけても歯切れの良い返事は返って来ない。むしろ、関わり合いたくないといった感じでそそくさと何処かへ行ってしまう。
暫くそんな状況が続き諦めかけていた頃だった。
「新撰組の事を嗅ぎ回っている小童はお前の事か?」
和紗の前に立ったのは長身の男。無造作に?き上げた髪を後頭部の高さで結んでいる。目つきは鋭く鼻筋の通った男らしい顔付き……
この男が斎藤一だ。
「貴方は?新撰組の屯所をご存知でしょうか?誰に聞いても教えてもらえないのです。むしろ新撰組と口にしただけで逃げられてしまって。」
「新撰組の屯所を知ってどうするつもりだ?」
斎藤は目の前の華奢な少年を見下ろしながら問う。
和紗は答えた。
「新撰組に入隊させて頂きたいのです。」
斎藤は目を見開いた。見た所十五、六の少年が脇差しを抱えて新撰組への入隊を希望している。小柄で細い腕で刀が扱えるとは到底思えない身形をしているが、どうにも狂言とは思えぬ真剣な眼差しでそう言うのだ。
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