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同じ、僕から生まれた存在だったはずなのに。彼等に嫉妬と憎しみを感じている僕がいた。けれど、体を持たない僕に出来ることは、感情を湧きあがらせることだけ。思うだけで、何も出来ないのだ。本当の僕のことを好きな人なんて、所詮何処にもいなかったのだ。悔しい。悔しすぎる。ぼんやりと光を放つ僕の魂が、小刻みに震えた。
そんな僕の元に、ハイヒールを履いた、セクシーな女性が現れた。彼女はルージュを引いた唇を、艶かしく動かす。
「私は好きよ、貴方のこと」
……本当ですか!! 僕は魂の中で叫んだ。女性は妖艶に微笑むと、両手ですくい上げるように、僕の魂を持ち上げた。
「ええ、大好きよ。貴方の魂はね」
彼女が呟いた。カバンを開けると、沢山のぬいぐるみが出てきた。その時、声とは違う言葉が、僕には聞こえてきた。
『タス……ケテ……』
『ダレカ、ダシテ』
『カラダ、モド……シ、テ』
不信感と、恐怖感から、彼女を見る。彼女は悪びれる様子もなく微笑み、僕達に言ってのけた。
「誰かに愛してほしかったのでしょう? 良いじゃない。骨も肉体も魂も、みんな愛されているのだから。愛されているのは、紛れもなく全て貴方なのよ」
彼女の目が赤く光った。
その瞬間、僕の魂がうさぎのぬいぐるみに移動したのが分かった。彼女はぬいぐるみ達を無造作に押しつぶすと、カバンのふたを閉めて再び歩き出した。
(完)
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