骨と肉

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 三年程前のこと。僕の体は、骨と肉に別れてしまったのだ。  骨と肉。つまり、僕の肉体から、何時しか骨だけがすっぽりと抜けていたのだ。かと言って体に傷は一つもなく、僕の人格にも何ら支障は無かった。  それどころか、骨と肉に体が分かれたこの奇異な出来事には、良いことづくめだった。骨、そして肉体に体が分かれた僕は、どちらかの体に、好きな時に入ることが出来た。  骨の体を使いたい時は、魂を骨の体に移動させ、肉体を使いたい時は、魂を肉体に移動させる。それだけで、どちらかの体を自在に使うことが出来るのだ。骨と肉は、同じ一つの、「僕」と言う存在から形成されていたものだったが、僕にとっては二人の、「僕」であるように感じていた。  骨の体を使う時は、主に理科室の模型とすり替えて、小学生達をバカにしていた。学校の活性化にも繋がったので、校長先生からお礼を言われたことも多い。その他にも、近所の意地悪なじいさんばあさんを脅かしてやったりした。  向こうはまさか、相手がガイコツだとは思っていない為、幽霊が出たと馬鹿騒ぎしたものだ。泣き叫ぶじいさんばあさんが少々可哀想だったが、意地悪で困っているのは僕達だけじゃない。じいさんばあさんに困らされていた人々に、じいさんやばあさんが泣きついて行くと、近所の人々との妙な団結が生まれたりした。  この通り、骨の姿によってオカルト感を出しながらも、結果的には良い行いをしていることが多いのだ。  肉体に関しては、使い方は主に人間の姿の時と同じだが、骨が無い分、多少変な動きをしても体を痛めなくて良い。合コンで、体を本来は絶対にそっちに曲がらないだろうと言う動きをすると、ドン引きされる半面、褒めてくれる女子も多いのだ。愛するより愛されたいと思っていた僕には、好都合だった。  女子が転びそうな時や、何かにぶつかりそうになった時、僕が直前に前に出て縦になると、僕がクッションになって女子が怪我をせずに済む。こうなってくるとメチャメチャドン引きし、挙句の果てには、怖いと泣き叫んで逃げる女子もいるが、その中でも、ごく僅かな確率で、僕を好きになってくれる女子がいる。  そう。骨のみになっても、肉体のみになっても、これが案外モテるのだ。それも、元の体の時以上に。
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