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モテる要因には、骨や肉体のみと言った極端な姿になり、やけっぱちになって強気な姿勢だからと言うのも一理あるかもしれない。だが、それとは別に、人間の趣味の幅広さを僕は痛感していた。
人間には、巨乳好き、貧乳好き、イケメン好き、ブサメン好きなど多様な趣味があるが、中にはガイコツが好きな者や、肉の皮が好きな者もいるのだ。
そんな彼女達と恋人になった僕は、骨と肉体を使い分けて、現在スイートライフを満喫している。
しかし今、僕に最大の試練がのしかかっていた。
何と一週間後、僕の骨の彼女と、僕の肉体の彼女とのデートの日付が重なってしまったのだ。
僕は、骨と肉体のどちらかにしか入ることが出来ないと言うのに、僕はスケジュールのことも考えず、つい気が緩んで同じ日にしてしまった。
時間をずらすのが無難だが、こんな僕でも一応清掃員の仕事がある。なので時間を変えるのは厳しい。
どうしようか。答えの見つからない悩みと、まだ起こりもしていない不安ばかりが脳内を過ぎり、僕は一週間を棒に振ってしまった。
… … …
一週間後の当日、答えが見つからないまま、僕は骨と肉体をその場に置き、魂を宙に浮かせながら悩んでいた。
「骨男さん!」
「肉男君!!」
何てことだ。皮肉にも、骨の彼女と、肉体の彼女が同時に来てしまった。僕の名を叫ぶと、互いのことを気にも留めず、此方に近寄って来る。どうする、どっちに入るよ僕!!
などと迷っていると、彼女達は、それぞれ僕の骨と肉体を抱きしめ、そのまま持ち上げて歩き出した。
お、おい!? 僕喋って無いのに良いのかよ!?
浮遊する魂となって、それぞれの彼女を見に行く。すると、どちらの彼女も僕の骨と肉体を抱え、嬉しそうに語りかけていた。まるで、人形でも持つかのように。
僕はその時やっと気付いた。彼女達が好きだったのは、「僕」ではなく、「骨」と「肉体」、彼等と言う存在であったと言うことを。
同じ、僕から生まれた存在だったはずなのに。彼等に嫉妬と憎しみを感じている僕がいた。けれど、体を持たない僕に出来ることは、感情を湧きあがらせることだけ。思うだけで、何も出来ないのだ。本当の僕のことを好きな人なんて、所詮何処にもいなかったのだ。悔しい。悔しすぎる。ぼんやりと光を放つ僕の魂が、小刻みに震えた。
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