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学食で眺め渡しても萩原夏月の姿は見つけることができなかった。今日は教室で昼食をとっているのかもしれない。
クラスメイトの佳彦と食事をとった後、景斗はクラスに戻らずぶらぶらと廊下を歩いた。
無目的に歩いているうちに渡り廊下から外へ出た。そしてどういうわけか以前上級生に殴られた弓道部の部室の近くまで来ていた。
「…………」
どうして自分がそんなところにまで来てしまったのか、その時ようやく景斗はわかった。
弓道部の部室の壁に夏月が寄りかかって立っている。
「先輩……が、俺を呼んだの?」
「そうだ」
夏月はどこかぼんやりした視線で景斗を見ていた。
「ほんの少しずつ、お前の意識に触ってみたんだ」
「そういうことも出来るんだ……」
「ドリトルから聞いたんだな?」
「うん」
景斗が夏月のそばに立つと、彼は壁に沿ってずるずるとしゃがみこんだ。
「先輩、ひょっとしてゆうべ俺の声聞いた?」
夏月は景斗の言葉を聞いて、ふた呼吸程置いた後、うなずいた。
「君のこと考えていたら聞こえた……。普段はそんなことしないんだけど。特に僕にむけていたからよくわかった」
「俺のことって……どうして」
「君がまた無茶してんじゃないかと思って」
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