2.盗難事件

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 そう言いながらトゥーシャがトムの顔を覗き込んで身を屈めたと同時に、今まで彼の頭があった場所を矢が通過して横の木の幹に突き刺さった。 「きゃぁっ!」  トムの悲鳴を聞いて、トゥーシャはトムが見つめる視線の先にゆっくりと頭を向ける。先ほどまで自分の頭があった位置に刺さった矢を見つめて冷や汗が流れた。  トムが木に刺さった矢を指差す。 「手紙がついてるよ」  トゥーシャは気を取り直して矢を引き抜くと結びつけられた手紙を広げた。  それは噂のエトゥーリオからのものだった。 ――前略。君に言っておきたい事がある。大切なのは愛だ。  そういうわけで、トゥーシャ、貴様に話がある。案内をよこすのでおとなしくついて来い。  早々に闇の宮殿に来るように。 草々――  手紙を読み終わったトゥーシャはガックリ肩を落とす。 「意味がわからない……。それよりもあいつ、ぼくを殺すつもりか?」  トゥーシャが大きくため息をつくと、矢と手紙が黒煙を上げて消滅し、頭上三十センチくらいのところに光球が現れて、導くようにゆっくりと闇の宮殿の方角へ向かって移動し始めた。 「どうやら案内ってのはこれのことらしい。ついて行ってみるか」  二人は光の球の後について闇の宮殿に向かって歩き始める。 「案内があれば少しは楽にたどり着けるだろう」 「いつもは楽じゃないの?」  光の球にちょっかいを出しながらトムが問いかけた。  トムが手を伸ばすと光球はそれをよけるように、ひょいと浮かんだり沈んだりする。それがおもしろくてトムは再び手を伸ばす。 「いつもはRPGのダンジョン並に面倒なんだよ」 「でも、魔法でパッと解決しちゃえばいいんじゃないの?」
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