3.闇の宮殿

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 黙って睨み合った二人に、それまで彼らのやり取りには全く興味を示さず、部屋の中を珍しそうに眺め回していたトムが突然口を挟んだ。 「ねぇ、関係ない事聞いていい? ルーイドって箱を封印した後、長く生きてたの?」  トムの素朴な疑問にトゥーシャが答える。 「いや、亡くなる数ヶ月前だったはずだ。封印したのは」  それを聞いてトムは激しく驚いた。 「え――――っ?! 封印されたのは五十年も前なんだよね?! ルーイドの弟子だったって事は二人とも五十才以上なの?!」  トムの目には二人とも二十代前半に見える。  トムの驚きに納得してトゥーシャは少し笑った。 「あぁ、それか。あっちとは時間の流れが違うんだよ。エルフィーア姫は九十三才。そこの性悪は五百年以上生きてる」  親指を立ててトゥーシャがエトゥーリオを指すと彼は不愉快そうに眉を寄せ、腕を組んで言い返した。 「誰が性悪だ。貴様とて私と大差ない年だろう」  トムは目を丸くして絶句すると、しばらくの間何度も二人を交互に眺めた。少しして再びトムが尋ねた。 「もう一つ聞いてもいい? トゥーシャが光の魔法使いでエトゥーリオが闇の魔法使いなんだよね?」 「そうだけど?」  トゥーシャが頷くとトムはまたしても二人を交互に見つめて率直な意見を述べた。 「なんか見た目、逆な気がするんだけど」  光のトゥーシャは闇を集めたような黒髪に黒い瞳で平凡な容姿。一方闇のエトゥーリオは光を集めたような金の髪に碧い瞳で整った華やかな容姿をしている。見た目は確かにトムの言う通り逆である。  もっとも、エトゥーリオは闇の一族を統べる立場にありながら、元々光の魔法使いだったので光の魔法も操る事はできるのだが。  トムの言葉にエトゥーリオは声を上げて笑う。そして微笑みながら手招いた。 「なかなか正直だな、少年。ついでにいい事を教えてやろう。こっちへ来い」 「え? 何?」  トムは好奇心に駆られ、エトゥーリオに向かってかけだした。  その姿を見つめるエトゥーリオの口の端が微かに持ち上げられたのを見て、トゥーシャはトムに向かって手を伸ばす。 「行くな、トム!」 「え?」
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