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箱の下に広げられたエトゥーリオの手の平が薄紫の光に包まれる。徐々に膨らんでいく光を目にしてトゥーシャは宙に浮いたルーイドの箱を掴むと抱きかかえた。
「やめろ! 箱根の職人さんが丹精込めて作った伝統工芸品だぞ!」
魔力を集めた手の平をトゥーシャに向けるながら、エトゥーリオは苛ついたように叫ぶ。
「そんな見ず知らずの職人さんに義理立てする謂われはない! 箱をよこせ! でないと、貴様ごと破壊するぞ!」
一触即発状態の二人の間に、トムが呆れたようため息をつきながら割って入った。
「はいはい。五百年以上も生きてるいい大人が、いちいちケンカしないで。ぼくが開けてあげるから」
トゥーシャは驚いたようにトムを見つめる。
「おまえ、開け方わかるの?」
トムはにっこり笑ってトゥーシャを見上げると手を差し出した。
「ぼく、そういうの得意なの。貸して」
「おもしろい。やってみろ」
エトゥーリオも魔力を引っ込めしばし休戦のかまえ。
トムはトゥーシャから箱を受け取り、少しの間眺め回した後、クルクルと箱を回し、側面を順にスライドさせていく。最後に上ぶたを大きくスライドさせて、箱をトゥーシャに差し出した。
「はい。開いたよ」
「すごいなー。ってか、透視して開けただろ」
そう言ってトゥーシャはトムの頭をコツンと叩く。
「えへっ。ばれてた?」
トムは頭をなでながら首をすくめた。側までやって来たエトゥーリオが箱の中を覗き込む。
「なるほど、超能力か。で、何が入ってる?」
箱の中には古ぼけた銀色の鍵と折りたたまれた紙が入っている。
トゥーシャが紙を取り出して広げると、それはルーイドからのメッセージだった。トゥーシャがメッセージを読み上げる。
「この箱を開けし、好奇心旺盛なるバカ者よ。同封の銀の鍵を持ちて、デスバレーの銀の城なるシルタ姫を深き眠りより覚まされたし。それが汝の運命なり」
「だってさ。バカ者」
トムがエトゥーリオを見てペロリと舌を出した。エトゥーリオはトムを睨んで顔をしかめる。
トゥーシャの読むルーイドのメッセージはまだ続いた。
「なお、バカ者はおそらくエトゥーリオであろうから、姫の絵姿を同封する。――って、なんだ、これ?」
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