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二、三歩歩いたところでトムは首を押さえてしゃがみ込んだ。
「いたーい!」
「どうした?」
トゥーシャはあわててトムに駆け寄り、首を押さえたトムの手を掴んではずした。
見ると、首筋に花のような赤黒いアザが浮かび上がっている。トゥーシャはハッとして息を飲んだ。
「闇の刻印……!」
トゥーシャがエトゥーリオを睨むと、彼はゆっくりと目を細めた。
「なつかしいだろう。それを刻まれた者は地の果てまで逃げようとも闇の獣から逃れる事はできない。もっとも、私のは闇の導師の物よりバージョンアップしているからな。そんな風に痛みを与える事もできるし、たとえ異世界に逃げようと逃げ切れないぞ」
「何のつもりだ」
「こんな事もあろうかと、保険をかけといた」
平然と言い放つエトゥーリオにトゥーシャは苛々と問い返す。
「何のために?! 箱の中身は手に入れて満足しただろう。後はおまえの好きにすればいい。ぼくらは関係ないじゃないか!」
「結末を見届けようとは思わないのか?」
意外そうに目を見張るエトゥーリオに、トゥーシャは腕を組んで顔を背ける。
「興味ないね。眠ってる女の子を起こしに行くだけなら、一人で行ってくりゃいいだろう」
トゥーシャがそう言うと、エトゥーリオは目を細くしてトゥーシャを見た。
「バカか、貴様は。シルタ姫がただ眠ってるだけだと思っているのか? 鍵が厳重に封印されていたという事は、本来なら起こすべきではないはずだ。だが、鍵を手に入れたからには起こせと言っている。あのじじいは私に何か面倒な事を押しつけようとしているに違いない。そう思わないか」
トゥーシャは顔を背けたまま、横目でチラリとエトゥーリオを見た後、ポツリと白状する。
「思うから、行きたくないんじゃないか」
「そうと聞いたからには、是非とも一緒に来てもらおう」
エトゥーリオは楽しそうに笑いながらトゥーシャに手を差し出した。トゥーシャはその手をはたく。
「行きたくないって言ってるだろ?! だいたいルーイド様はおまえを指名したんだ」
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