5.城の在り処(ありか)

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 エトゥーリオは腕を組んでムスッとした。 「そうだ。それが一番ひっかかる。なぜ直弟子の貴様ではなく私なんだ。あいつとは袂を分かって以来、三百年以上顔を合わせていないんだぞ。それを見極めるためにも絶対来てもらう」 「絶対、断る!」 「いたーい!」  トゥーシャが間髪入れずに拒否すると、隣でトムが再び声を上げて首を押さえた。目に涙を浮かべて顔をゆがめている。本当に痛そうだ。 「卑怯だぞ、おまえ!」  トゥーシャが怒鳴るとエトゥーリオは意地悪な笑みを浮かべる。 「貴様が甘い事は承知している。行くと言わなければ、少年がもっと痛い目に遭うぞ」 「トムは関係ないだろう?! ネコをいじめると、死んだ後化けて出るぞ!」 「なるほど、それは困る」 「え?」  苦し紛れに言った言葉に、エトゥーリオがあっさり退いたので、トゥーシャは思わず間の抜けた表情でエトゥーリオを見た。  トムはと見ると、痛みが退いたらしく、首をなでながらホッと息をついている。  あまりに素直なエトゥーリオが薄気味悪くて、探るように見つめると、彼は再び意地悪な笑みを浮かべた。 「かわりに貴様がうんと言うまで、毎日寝所におはようとおやすみのキスをしに行ってやる」  トゥーシャは頭をかかえながら半狂乱になって叫んだ。 「やめてくれ――――っ!!」  その様子を冷めた目で見つめながらトムが言う。 「いいんじゃないの? そのくらい。ぼくみたいに痛いわけじゃなし」  トゥーシャはすかさずトムの方を向くいて、拳を握って怒鳴る。 「いいわけないだろう! 精神的に痛いじゃないか!」 「だったら、答えはひとつだな」  エトゥーリオが勝利の笑みをたたえてトゥーシャを見つめた。トゥーシャは少しの間エトゥーリオを睨んだ後、吐き捨てるように言う。 「……行けばいいんだろう? ほんっと性悪だよな」 「ねぇ、そうと決まったら、この痛いの取ってよ」  トムが自分の首を指差して言うと、エトゥーリオはニヤリと笑った。 「全部済んだらな。それまで私の機嫌を損ねないように、せいぜいトゥーシャにお願いしておくことだな」 「ほんっと、性悪だよね」  トムは不愉快そうに眉をひそめて首をなでた。
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