5.城の在り処(ありか)

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「ぐずぐずしてないで、さっそと行くぞ」  そう言いながら大広間の扉を開け放ち、エトゥーリオは廊下に踏み出した。  渋々その後を追いながら、トムがトゥーシャに尋ねる。 「ねぇ、デスバレーってどこにあるの?」  トゥーシャは首を傾げる。 「さぁ? アメリカのじゃないだろうけど、あいつが知ってんじゃないか? 張り切ってるから」  それを聞いてエトゥーリオは慌てて引き返してくると、トゥーシャに詰め寄った。 「デスバレーはどこにある?」 「ぼくが知るわけないだろう」 「あっさり言うな。少しは考えろ。そこの超能力少年はわからないか?」  唐突に矛先を向けられ、トムがキョトンとする。 「へ? ぼくは異世界のネコだよ。この世界の事なんかわかるわけないよ」  エトゥーリオは身を屈めて今度はトムに詰め寄る。 「だから、箱の匂いを嗅いでルーイドの残存思念を探るとかできないのか?」  それを聞いてトムは呆れたように目を細くしてエトゥーリオを見つめた。 「犬じゃないんだから、匂いを嗅いだって何もわからないよ。第一、五十年も前の物に匂いなんて残ってないでしょ」 「使えない奴らだな」  エトゥーリオは吐き捨てるように言うと、二人から顔を背けた。その横柄な態度にムッとして、トゥーシャが後ろからケリを入れる。 「おまえこそ、少しは考えろよ!」  エトゥーリオは芝居がかった仕草で両手を広げると首をすくめた。 「今、充分に考えたとも。でも、わからなかった」 「ウソつけ!」  トゥーシャが再びケリを入れると、エトゥーリオは彼を睨んで指差す。 「デスバレーの場所がわからない限り、貴様らは帰さないぞ。気合いを入れて考えろ」  デスバレーの場所が判明しない限り、エトゥーリオは本当に帰してくれそうにないので、トゥーシャは仕方なく考えてみる事にした。  直訳すれば《死の谷》。そんな不吉な名前の場所には心当たりがない。だが、そんな不吉な名前が似合いそうで、もしかしたらそこにあるかもしれない場所なら、ひとつだけ心当たりがある。 「なぁ、この森の中に砂漠とか塩の湖とかないか?」 「なんだ、それは」 「やっぱデスバレーっていうと、アメリカのを思い浮かべちゃって」
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