5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぐずぐずしてないで、さっそと行くぞ」
そう言いながら大広間の扉を開け放ち、エトゥーリオは廊下に踏み出した。
渋々その後を追いながら、トムがトゥーシャに尋ねる。
「ねぇ、デスバレーってどこにあるの?」
トゥーシャは首を傾げる。
「さぁ? アメリカのじゃないだろうけど、あいつが知ってんじゃないか? 張り切ってるから」
それを聞いてエトゥーリオは慌てて引き返してくると、トゥーシャに詰め寄った。
「デスバレーはどこにある?」
「ぼくが知るわけないだろう」
「あっさり言うな。少しは考えろ。そこの超能力少年はわからないか?」
唐突に矛先を向けられ、トムがキョトンとする。
「へ? ぼくは異世界のネコだよ。この世界の事なんかわかるわけないよ」
エトゥーリオは身を屈めて今度はトムに詰め寄る。
「だから、箱の匂いを嗅いでルーイドの残存思念を探るとかできないのか?」
それを聞いてトムは呆れたように目を細くしてエトゥーリオを見つめた。
「犬じゃないんだから、匂いを嗅いだって何もわからないよ。第一、五十年も前の物に匂いなんて残ってないでしょ」
「使えない奴らだな」
エトゥーリオは吐き捨てるように言うと、二人から顔を背けた。その横柄な態度にムッとして、トゥーシャが後ろからケリを入れる。
「おまえこそ、少しは考えろよ!」
エトゥーリオは芝居がかった仕草で両手を広げると首をすくめた。
「今、充分に考えたとも。でも、わからなかった」
「ウソつけ!」
トゥーシャが再びケリを入れると、エトゥーリオは彼を睨んで指差す。
「デスバレーの場所がわからない限り、貴様らは帰さないぞ。気合いを入れて考えろ」
デスバレーの場所が判明しない限り、エトゥーリオは本当に帰してくれそうにないので、トゥーシャは仕方なく考えてみる事にした。
直訳すれば《死の谷》。そんな不吉な名前の場所には心当たりがない。だが、そんな不吉な名前が似合いそうで、もしかしたらそこにあるかもしれない場所なら、ひとつだけ心当たりがある。
「なぁ、この森の中に砂漠とか塩の湖とかないか?」
「なんだ、それは」
「やっぱデスバレーっていうと、アメリカのを思い浮かべちゃって」
最初のコメントを投稿しよう!