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「城の警備に問題があるんじゃないですか?」
呑気に問いかけるトゥーシャにエルフィーア姫は苛々して叫ぶ。
「もーっ! 少しは緊張しなさいよ! 盗んだのは魔法使いよ!」
しかし、トゥーシャは相変わらず平然としている。
「でしょうね。魔法結界を解いて持ち去ってるんだから」
何を言ってものれんに腕押し状態のトゥーシャに苛ついて、姫は怒りの矛先を彼に向けた。
「あんたのせいよ! なんでもっと強力でスペシャルな結界を張っておかないのよ!」
さすがにトゥーシャも面食らって反論する。
「へ?! ぼくがやるまでもないっていうか、ぼくにやって欲しくないっておっしゃったのは姫じゃないですか!」
「だって、あんたの呪文聞きたくないんだもん」
「それは悪うございましたね」
二人がそれぞれ腕を組んでプイっと顔を背け合った時、ずっと黙って様子を見ていたトムが呆れたように声をかけた。
「……ねぇ、緊急事態じゃなかったの?」
トムの声に姫は振り返ってトゥーシャを指差す。
「そうなのよ! さっさと取り返して来なさいよ!」
「誰から?! どこから?!」
トゥーシャが問いかけると姫は後ろで手を組み胸を反らしながら、意地悪な笑みをたたえて彼を横目で見上げた。
「盗んだ奴の見当はついているの。当ててごらんなさい」
今度はトゥーシャの方が苛々しながら問いかける。
「わかりませんよ。教えて下さい」
「少しは考えなさいよ。あの結界を解いて、ルーイドの封印を解ける自信のある魔法使いなんて限られてるでしょ?」
「ぼくじゃありませんよ。ぼくにはアリバイがあります」
再び押し問答を始めた二人を見かねてトムが口を挟んだ。
「もしかして、エトゥーリオ?」
二人は同時にトムに注目する。
「なんで、おまえが知ってんの? 姫、本当にエトゥーリオ?」
「そうよ。なんであんたわかったの?」
二人が不思議そうに尋ねると、トムは得意げな笑顔で答えた。
「ぼく、人の考えてる事わかるの。超能力ってヤツ?」
トムは人間になった時、ほんの少しだけ超能力が使える。
それは、ネコの時に持っていた能力が人間の器に入りきらなかったため、付加機能として備わったものだ。
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