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闇の一族とは別に人外の者ではない。世の中や歴史の表には出ない闇の部分に関わる者たちの事だ。中には人外の者もいるらしいし、魔物を使役する者もいるとか、いないとか、詳しい事は闇に秘されていて世間には知られていない。
何がエトゥーリオを闇に向かわせたのかは謎だが、トゥーシャの見解では元々自信家で自分本位なエトゥーリオは王室に使役されるのがイヤだったのだろうと言う。
光の魔法の大半を習得後に闇に転向したエトゥーリオは使える魔法のバリエーションでトゥーシャを遙かに上回る。魔法使いとしてはかなりな上級者だ。
ただし、彼の性格には多分に問題があった。
「ま、わかりやすく言えば、エトゥーリオは悪?い魔法使いなの。ちなみにぼくは、よい魔法使いのお兄さん」
そう言ってトゥーシャは自分を指差すとトムの頭をなでながら笑顔を向ける。
トムはうるさそうにトゥーシャの手をはねのけると、探るように彼の目を見つめた。
「ふーん。でも、その悪い魔法使いに苦い思い出があるみたいだね」
トムの言葉にギクリとして、思わずうろたえたトゥーシャの脳裏をエトゥーリオとの苦い思い出が走馬灯のように駆け巡った。
ヤバイ! と思って意識にフタをしようとした時にはすでに遅かった。トムがトゥーシャを指差して思い切り笑い始める。
「おまえ! ぼくの頭の中のぞいたね?!」
トゥーシャが拳を握り、真っ赤になって怒鳴ると、トムは笑いをこらえながら涙目で彼を見上げた。
「だって、興味あるもん、他人の過去って。でも、あんたの傑作。ファーストキスの相手が男だなんて。しかも結構最近? エトゥーリオってゲイなの?」
トゥーシャはひとつため息をつく。
「違うと思う。あいつは普段ものぐさなくせに、ぼくの嫌がる事をするのにはどんな労力も嫌悪感も厭わないやつなんだ。それに、どっちかっていうとロリコン。王室の大臣達の言う事は聞かないくせに、エルフィーア姫の言う事は聞くし。姫に求婚した事もある。どこまで本気なのかは不明だけどね。案外、ぼくに対する嫌がらせの一環かもしれない」
トゥーシャが不愉快そうに顔をしかめると、トムは対照的に楽しそうに目を輝かせた。
「なんか、かなり個性的な人だね。会うのが楽しみ」
「そのセリフ、あいつと会ったら後悔するぞ」
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