ほしをばらまいて

はじまり

チャット相手には言えない私のこと。
本名、滝谷恵美。年齢、24歳。職業、美術講師(私立の非常勤)。独身、彼氏もなし。
授業の入っている日は朝は7時に起きて、一日授業をして、夜は20時に帰宅。お酒は飲まない、弱いから。夕飯は基本コンビニ弁当、贅沢したい時は外食も。
シャワーを浴びてだらだらと過ごし、PCを開いてチャットして、寝床に就くのは24時を過ぎるのが大半。この繰り返しである。
チャットでの私は"星屑"というHNで、男性のキャラだったり、女性のキャラだったり…、年齢性別は明かしていない。

今日もチャットで適当な相手と話をして、時計を見ればもう日付の変わる頃。そろそろ寝ないと。明日は授業が入ってる。

"今日は落ちます。お相手ありがとうございまひた。"
"はい、また話しましょー"

また、此の言葉に深い意味は無いのだと思う。再会を約束した訳でも無いのに、そこまで意気投合した訳でも無いのに、ここで話す人たちはまた、という言葉を最後に付け足す。
次はいつ話せるかも分からない、或いはもう話さないかもしれない相手に、私も"また"と返してPCの電源を落とす。
――ばいばい、何とかさん。