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正直、それまで俺は、女の子と付き合ったことなんか一度もなかった。
その上、あっちからの告白とあって、俺は一気に舞い上がった。
幸い、多少なりとも共有できる思い出もあり、
口下手でヘタレな俺でも、デートの時の話題にもあまり困らない。
そうして、数回デートを重ねたある日、
いつも通り、彼女の最寄り駅まで送った時に
不意に駅舎の隅に引っ張って行かれた俺は、彼女からキスをされた。
絵に描いたように、一気にパニックになった。
だから、当然どうしていいか分からなくなり、ボォーッするしか出来ない。
だが、そんな俺に、彼女はトロンとした目で見上げてきた。
「ねぇ、奥村くんからもして……?」
キスなんてしたこともないし、どうしたらいいか分からず
俺は訳もなく迷った。
だが、それでも見上げ続ける彼女に、意を決して恐る恐る唇を寄せていく。
もう、自分でも分かるほど俺は震えていた。
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