233人が本棚に入れています
本棚に追加
静まり返った室内に
携帯のコール音は
耳に当てずとも聞こえてきた。
俺はその音がたった一回鳴ると
そこで電話を切った。
電話を切ると
コール音の代わりに聞こえるのは
俺の鼓動。
その振動が細い神経を伝って
携帯を握る手が小さく震えた。
しばらく経って
携帯をテーブルに滑らせると同時に
ジージーと携帯が小さく動き出した。
涙が出そうになっていた。
慌てて携帯を耳に運ぶ。
『…越石…くん…?』
彼女のくぐもった声が俺の鼓膜を優しく包む。
あの…笑顔みたいに。
「…会いたい…高遠さん…」
「会いたいよ…」
最初のコメントを投稿しよう!