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どれくらい経ったのか
近付く車のエンジン音にゆっくりと顔を上げた。
ヘッドライトの明かりが私を照らすように迫っていた…
そして、アパートの前で
タクシーは停まった。
階段の手すりにつかまって立ち上がった私は
時間を置かずに発車したタクシーを静かに見送った。
そして、その影から現れた彼は、
照れ臭そうに少し手を遊ばせて
大股で私のところまでやって来た。
「…ここで…待ってたの…?」
「…うん」
「外に一人でいたら危ないじゃん」
「…ごめん…」
目が…
合わせられなかった。
俯いたまま返事をする私に、彼は普段通りの口調で話してくれる。
電話ではもっと切羽詰まったものを感じていただけに、
少し拍子抜けしながらも
不安が募った。
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