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私は通話ボタンを押した。
後に訪れるだろう虚しさも悲しさも
声を聞く前よりもずっと大きく跳ね返ってくるってことはわかってる。
だけど…
心の準備が出来る前に
コール音はすぐに途切れた。
「…越石…くん…?」
彼の名前を呼ぶだけで
涙が零れた。
彼には気付かれないようにしたつもりだ。
なのに…
電話の向こうの気配に、私からの言葉は
もう…出なかった。
『…会いたい…高遠さん…』
『会いたいよ…』
私は両手で顔を覆った。
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