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ふと、視界の隅に白く揺れる花が映るー。あれは…ついこの間四人で植えた花だった。その純白を見た瞬間、雪霧は何故かわかった気がしたー。僕はーー。
「そんな…、ひっく、……織田くん…」
頭上からあさ姫の消え入りそうな声が聞こえる。良かった…、君はまだ歩けるようだ…。
「琴之羽さん、早く走って逃げるんだ…。」
「そ、そんな……。だって、」
「琴之羽さん、足切ってて痛いだろうけど頑張って……」
「…ひっく……だって、織田くんこんなに血が出て…」
「僕のことは…いいから。」
「そ、そんな……」
優しい君はこんな時でも自分より人を思いやれるんだね…。
「いいから!…早く走るんだ!! 」
「…っできないよ!友だちを…こんなところに置いていけないよ!!」
ドォン!!
すぐ側の爆撃にあさ姫はひっ、と悲鳴をあげた。あさ姫が見ると、雪霧の下半身は炎にのまれ焼けていた。
「いや、いやあああああ!!織田くん!織田くん!!!」
「逃げ…、るんだ……あさ姫……」
声にならない悲鳴を上げながらあさ姫はふらふらと後ずさった。
「ごめんなさい!ごめんなさい織田くん!!ごめんなさい!!!」
細い声を絞り出すような悲鳴が遠ざかるのを聞き、雪霧は安堵していた。
雪霧の目にはいつかの夕刻の金色の光がありありと広がっていた。優しい蒼の瞳が微笑みかける。ああ、ほんとうに…
君を好きになれて良かった………
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