辺境の花と濃紺の兵服

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パチパチと炎が焼ける音がするー。其処彼処で炎が上がる中、濃紺の影が一つ。気を失い炎の間に倒れたあさ姫を抱き起こし、乱暴とも言える手つきで抱え、炎に臆する事もなく校庭を冷静に歩いて行く。 校庭を抜けた処に丁度開けた空き地があり、そこにあるのは最新鋭の軍事用ヘリコプターである。ヘリコプターにあさ姫を乗せ、自身も乗り込む。濃紺の軍服の兵士は小型無線のスイッチを入れる。ノイズの少ないこれまた最新鋭のものだ。 「こちら標的を捕獲。」 たった一言そう告げる。 田舎町に似合わぬ黒の機体がさして音も立てず地面をはなれ、あっと言う間に上空400メートルまで浮上する。黒の機体は浮上する間に空の青と同化し、やがてすっかり見えなくなった。 雲一つ無い青空の下、炎に燃え盛る中学校だけが世界に置き去りにされたかのようにごおごおと悲鳴をあげるばかりだった。
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