囚われた花の記憶

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目覚めると其処(そこ)は薄暗くひんやりとした場所だったー…。まだぼやける視界に は淡い光が漂うも、それは離れた場所からのものらしい。ここは薄暗い……。 昔の夢を見ていたような気がするー…。あさ姫はまだはっきりとしない思考でぼんやりと思う…。ここは…どこだっけ……。 地面からゆっくりと身体を起こす。と、同時に右足首をずきりと鋭い痛みが襲った。 「いたっ……!」 思わず声を上げたあさ姫は、さらにおかしなことに気づく。ジャラ、という重い金属音に目を伏せると、自身の両手首と両足首には分厚い枷がかけられ、そこから続く長く太い鎖が地面を這い、光の無い暗闇の方へと続いているのだったー。 「なに……ここ………」 自分はまだ寝ぼけているのだろうか…。焦燥とともにだんだんとはっきりしてくる思考にあさ姫は慄いた。 そうだ……わたしは…… 思い出したくないー。しかし自らの纏う砂に塗れた焼けた制服が、右足首の痛みが、残酷な記憶が真実であるとあさ姫に訴えかける。 みんな…… まこちゃん 小梅ちゃん 織田くん… みんな……!! 身を割くような悲しみとも怒りともつかぬ感情があさ姫を襲った。涙が両の目からでは足りぬほどぼろぼろと零れ落ち、口からは声にならない叫びが漏れる。言葉になんて、出来るはずもないー…。火に焼ける見慣れた真珠のビーズの髪飾り…炎の海に消えた後輩…焼ける雪霧の下半身…全てが嘘であって欲しかった。 あさ姫はひたすらに呼吸を乱しながら、今までにないほど泣き崩れた。この激情はあさ姫の小さな身体では受け止め難いものであった。
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