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ー 「平穏な日常とは突如として崩れ去るものである」…。雪霧の脳裏に、今この場所にも場面にも何の関係も脈絡も無い言葉が唐突にも浮かび上がったのは、それから5分後のことだった。何かのテレビ番組で聞いたのだったか、いつか読んだ小説の一文だったか…いずれにせよさして珍しくもないその文章が不意に脳裏を過ぎった。
「それにしても、まこ先輩が東京の高校受験されるなんてなぁ~」
尋山中学校園芸部員4人は校舎の傍らにある木陰にブルーシートを敷き、一時休憩の時を過ごしていた。
「うん。向こうの高校の方が目指すレベルの大学に近づけるし」
優雅に紅茶の入ったティーカップを傾ける委員長ーその傍らで残念そうな顔をした小梅が続ける。
「なんだか寂しくなっちゃうなあ~。わたし、まこ先輩と同じ高校行きたかったです~。」
「ふふ、まだ受験は来年よ。受かったみたいに言わないで。」
「まこ先輩なら絶対何処だって受かりますよ!」
「ありがとう。がんばらなくちゃね。」
先ほど炎天下で花の世話をしていた時は風など微塵も感じなかったというのに、こうして木陰でじっとしていると何処からか確かに心地よい風が吹いてくる。不思議なものだー。雪霧は自らの中に浮かんだ先ほどの言葉を反芻していた。別に、急に状況に関係の無い何かが心に浮かぶことなんて珍しくも無いー。
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