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考えても無駄か…。そんな些末なことよりも、今は『彼女』のことのほうが先決だ。
「まこちゃん本当にお医者さん目指してるんだね。がんばってね…!」
雪霧の準備して来た和菓子を控えめに齧りながら琴之羽 あさ姫は友人を励ました。
「ありがとう、あさ姫ちゃん。」
「あさ姫先輩はどちらの高校に行かれるんですか?」
「えっと…。わたしはまだ将来やりたいこととかも決まってないし…。近所の普通科の所に。」
「なるほど~。あさ姫先輩もいつも真面目ですし!絶対行きたいと思われた所、合格しますよ!応援してますね!」
「あ、ありがとう。小梅ちゃん。」
こうして見ているとやはりあさ姫は別格だ、と雪霧は思う。女性を並べて見比べるなんて至極失礼だとは思うが、あさ姫の可憐さに雪霧は改めて見惚れた。見た目だけの雰囲気で云えばこの中では委員長と似ている。上品な雰囲気や、優しげな面持ちが。しかしどこか小動物染みた愛らしさ、守ってあげたくなる要素とでもいうのか、そういうものがあさ姫には確かに存在していた。それに加え…。雪霧はとある夕刻の帰り道を思い起こす。あれは雪霧が中学へ入学して2ヶ月ほどのことだった。どこか部活に入る気も無く、運動部で汗を流す同級生達と別れ一人校舎を出て歩いていたー。見渡す限りの田んぼだった。あぜ道を徒歩で自宅へと向かうー。帰っても用事なんて無かった。急いで帰る必要も無い。
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