辺境の花と濃紺の兵服

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涙で歪む視界の向こう側は、光に溢れていたー。まさに太陽が沈む直前なのだろう。眩しい金の光に包まれ、純白の少女がこちらを心配そうな表情で見ていた。…一瞬、雪霧は我を忘れた。この世の何よりも少女は美しかった。金糸の髪の向こうの穏やかな海色の瞳と目が合った。これまでのどんな感情とも似ていない不思議な感情に、それまでの陰鬱な感情の澱みは薙ぎ払われ、心が水を打ったように静かになってゆくー。 「怪我をされてるのですか?」 少女は再度心配そうに尋ねる。 陶器を思わせる白い肌を夕日が染める。 「いや…」 こんな感情、知らなかったー。 「ただ、少し嫌なことを思い出しただけですー。」 やっとそこまで言うと雪霧は再び歩を進めた。少女も同じ方向に帰宅するのだろう、雪霧と歩き始める。お礼が言いたい……雪霧はそう思ったが、元来感情を言葉に出して人に伝えるのが大の苦手な彼である。真っ直ぐに伝えらぬたった一言にまた自分を歯痒く思った。 「おうちはどちらですか?」 「えっ…えっと、東区寄り…です」 「東区寄りですか、わたしの家と近いんですね。」 「そう…なんですね…」 唐突に会話が始まってしまった。ーこれ以上この子にかっこ悪いところを見せたくないな…内心雪霧はそう思い始めていた。元来会話の苦手な雪霧である。忘れ物をしたと嘘をついてこのままこの子と別れて学校に戻ってしまおうかー。 「あ、きのこ!」 「は???」 「このきのこ、食べられるんですよ!」
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