3.ミューズに捧げるアクアパッツア

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 先月下旬からぐずついた天気は、七月になっても相変わらずだった。  本格的な夏を前にして、青葉通りや定禅寺通りのケヤキ並木も豊かに生い茂り、一層青々としているけれど……。私もケヤキも、燦々とした太陽の光が恋しい今日この頃。 「ちょっと、桜木さん! なんてことするんですか!」  金曜日のまかないタイム。今日のメニューは冷やし中華──なんだけど、百瀬さんの悲鳴にも似た声が私を押しとどめた。  はて? 私、何かしでかしたかな?  訳がわからずにキョトンとしていると、陽ちゃんが苦笑して私の手元を指した。 「それだ。そのマヨネーズ」  ああ、マヨネーズ? うん、それが? 「克哉にとって、冷やし中華にマヨネーズはあり得ないんだ」 「えーっ? なんで?」  思わず目を見開くと、百瀬さんは断固受け入れがたいというように頭を振った。 「既に完成形なのに! せっかく俺が美麗に盛り付けたというのに! なんという冒涜!」  ぼ、冒涜って……。
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