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先月下旬からぐずついた天気は、七月になっても相変わらずだった。
本格的な夏を前にして、青葉通りや定禅寺通りのケヤキ並木も豊かに生い茂り、一層青々としているけれど……。私もケヤキも、燦々とした太陽の光が恋しい今日この頃。
「ちょっと、桜木さん! なんてことするんですか!」
金曜日のまかないタイム。今日のメニューは冷やし中華──なんだけど、百瀬さんの悲鳴にも似た声が私を押しとどめた。
はて? 私、何かしでかしたかな?
訳がわからずにキョトンとしていると、陽ちゃんが苦笑して私の手元を指した。
「それだ。そのマヨネーズ」
ああ、マヨネーズ? うん、それが?
「克哉にとって、冷やし中華にマヨネーズはあり得ないんだ」
「えーっ? なんで?」
思わず目を見開くと、百瀬さんは断固受け入れがたいというように頭を振った。
「既に完成形なのに! せっかく俺が美麗に盛り付けたというのに! なんという冒涜!」
ぼ、冒涜って……。
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