115人が本棚に入れています
本棚に追加
主のわからない声side
呼び出してしまった。
とうとう、やってしまった。
あまりにも不幸すぎる彼女…いや、彼を呼び出してしまった。
性同一性障害という病気にかかっている彼は、
産まれてすぐに両親を亡くし、
親戚から厄介者としての扱いを受け、
たらい回しにされ、
酷いときは暴力をふられ、
保育園や小学校、中学校での周りの生徒は、体が女なのに中身が男である彼を気持ち悪く思い酷い虐めをした。
家でも外でも味方の「み」の字の存在もいない彼は、二次元に逃げた。
といっても、パソコンもテレビも使っていいと言われなかったので、本屋を巡って立ち読みするだけ。
ファンタジー溢れる漫画や小説を読んで、彼は絶望した。
「自分は、この本の中の主人公になれない」
どこかで立ち読みした本に、こんな一節があった。
人生の主人公は、自分である。と。
彼は思わず「は?」と声を漏らした。
どの主人公も、幸せじゃないか。
この、自分が生きてる人生はなんなんだ。
この人生は誰が幸せになれる。
彼は、自分の周りの人間が、とても嫌そうな顔をして自分を見るのを知っていた。
何年も前から知っていた。
それこそ生まれた時から、それだけは確かだった。
結論、自分の人生では、誰も幸せにならない。
彼は、知識を得た。
様々な知識を得た。
中学三年生、15歳という短い人生を自ら終わらせた。
彼は、受験生で死ねば、受験のストレスという素晴らしい理由で「自殺」が世間に認知されるだろうと考えていた。
彼は、あまりにも不幸だったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!