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おず……と、手を伸ばす。
向かい側に。厳密にいうとアルくんの頭に。
自分を助けてくれたアルくんが、あまりにも辛そうだったから、
抱きしめてなだめてくれたお礼に、アルくんの頭を一撫でした。
「え…」
「ごめ…じゃない。あー、話してくれてありがとう。こんくらいしか、俺、出来ない、けど。
抱きしめてもらうのって、思った以上にあったかかったから…そのお礼、です。」
ポロ、とアルくんの目から涙が落ちる。
うんうん、俺だって父ちゃん似のおじーさん神父の前でギャン泣きしたんだ、泣きたいときに泣いたっていいんだ。それで俺とアルくんを怒鳴りつける人は、ここには__この世界にはいないだろうから。
アルくんの明るい茶髪は、随分とまぁ寝癖でいたずらしそうなクセッ毛で、俺の細く固い髪質と違ってとても柔らかかった。
「あり、がとう。
へへ、だからね…僕、誰かがいなくなると、凄く辛いし、二度と会えないのが怖くて………
失いたくないから、強くなりたいって思うようになっんだ。
だから、君の事も助けたんだよ。
髪色とか関係ない、もし君を助けてなかったら、僕はまたきっと後悔してた。
見返りが欲しいとか、そんなんじゃない。僕は、人にとって当たり前に来る日常を守りたい。死なせたくないし、奪われたくないんだ。
だから、強くなるよ。何が何でもね!目指すのは、魔王を倒す勇者だからさ」
調子が戻ったのか、嬉しそうにまた目指す夢で締めくくった彼を、俺は眩しいものを見るかのように見つめた。
おお…しまってくれ…ワシには眩しすぎる…(ラ〇゜ュタ)
ガチもんの聖人君子でもう何いえばいいかわかんねぇ。主人公じゃんこんなの。
俺は、アルくんのお陰でこの世界の事が好きになれそうだよ。
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